京都山科の山を登る。

ゆみ王

2020年02月09日 21:45



ここは京都市山科区。

僕の実家があるところだ。

この地で幼少期を過ごしたのだが、あいにくその頃は全く登山に興味がなかった。

最近になって調べてみると、どうやら山科には「牛尾山」という人気の山があるらしい。

実家に車を置いて、行ってみる。



それにしても山科駅前、30年前に比べて都会になったな。

自分が小学生の頃は、山科駅前には広い公園のみがポツンとあり、人通りは少なかった。

今では関西最大級の無印が出店し、大いに賑わっているようだ。



実家のある山科御陵から歩くこと30分。

ようやく牛尾山が見えてきた。

地元の山なので、まったく下調べをせずにやってきたが、どこが登山口なのか全然わからない・・・。

とりあえず、山を目指して歩いていく。



まずい。

地元なのに、完全に迷っている・・・。

仕方なく、通りすがりのおばちゃんに道を訊ねる。

地元民が地元民に道を訊ねるって、なんか変な感じだな。



すみません。

「牛尾山」の登山口って、どう行けばよいですか?

おばちゃん:こう行って次の角を曲がって・・・。

自分:ありがとうございます。大変助かりました。

おばちゃん:観光で来たん?どこから来たん?



自分:山科です・・・。

おばちゃん:山科って、ここやん・・・。



まずい・・・。変な空気だ・・・。

諸葛亮孔明なみに頭を働かせるが、何て言ってよいのか適当な言葉が見つからない。



言い訳じゃないが、山科区って広いのだよ。

僕の実家は山科の最も中心地だが、この牛尾山登山口は殆ど滋賀県なのだ。



余談だが、僕の育った山科の魅力を話してあげよう。

①京都市民なのに、滋賀県大津市と隣接するため、なぜか京都市民とは見なされず滋賀県民(大津市民)として見られる。

②京都市民からは滋賀県民(大津市民)と見なされる山科区民だが、山科区民は滋賀県民(大津市民)の事を完全に他府県の人と認識している。

③京都市民から村八分にされ、滋賀県大津市民と一緒にされる山科区民、そしてその山科区民から突き放される大津市民、その大津市民も自分たちが最も「都」に近いと自慢して、同じ滋賀県なのに彦根市民や長浜市民を北国の人と捉えている。

④昔はその筋の方たちが多く、初めて銭湯に行ったら見事な模様の大人が沢山いて、その模様をケラケラと笑っていたら親父の顔がひきつっていた。

⑤深夜遅く、たまに遠くから「パンパンパン!!」と音が聞こえたら、〇〇組という看板を掲げた建物の前に警察官が何人もいた。

これ、果たして魅力か・・・。



この記事、何を書いてたっけな。

そうそう、登山の記事や。

ようやく牛尾山の案内板を発見。



めっちゃ雰囲気が良い・・・。

山科にこんな場所があったんか・・・。



灯台下暗し。

こんな渓流が山科にあったとは。

歩いていて、めっちゃ気持ちが良い♪



キャンプにうってつけの広場。

やっぱり焚火の跡もある。

人だらけのキャンプ場に行くより、こういう場所でひっそりと野営する方がはるかに楽しいやろうな。



よし、ここで昼飯を食べるか。

自宅から出発して既に2時間半が経過。

喉もカラカラ。

リュックから水筒を取り出すと・・・。



しまった・・・。

完全に忘れていた・・・。



リュックに入れた水筒に、水を入れるのを忘れていた・・・。



なんてこった・・・。

2時間以上歩いて喉はカラカラ・・・。

しかも今日の昼食はインスタントラーメン。

食事も出来ない。

このピンチをどう切り抜けたら良いのだ・・・。



こんな山奥に、自販機なんかもちろんない。

楽しかったはずの登山が、苦行になっている。

しかも、水が一滴も無いとの焦りなのか、余計に喉が渇いてくる。

絶望の中、ひたすた前を見ていると・・・。



えっ・・・。

これは、幻覚か・・・。



いかにも飲んで下さいって雰囲気満々の、滝の水を発見!!

果たして飲めるのか!?

タイミングよく、またもや地元の人らしき通行人の爺さんを発見!!

※僕も地元ですが・・・。

ここの水が果たして飲料可能なのか聞いてみた。



そこの爺。

この滝の水は飲めるのか?

※実際はもっと丁寧に聞いています。



昔は飲んでいましたが、ここ最近は飲んでいませんね。

なるほど♪昔飲んでいたのなら大丈夫やね。



勢い良い流れ♪

あっという間に空っぽだった水筒が満タン!!

さっそく飲んでみる♪♪



えっ・・・。

口の中がジャリジャリ・・・。



水筒の中を良く見ると、細かい砂で一杯だ・・・。

すぐに飲むのを止める。

天国から地獄。

再び渇水の登山スタート・・・。



自宅を出発して3時間。

ようやく牛尾山の登山口に到着。

ここに来たら自販機があるかと思っていたが、何もない。



喉が渇いてもう限界・・・。

今までの登山歴の中で、最も過酷な登山だ。



牛尾山の牛尾観音という場所に到着。

人の気配があり自販機を期待したが、待っていたのは赤鬼と青鬼のみ。



お寺にある、手を清める場所だ。

飲みたい・・・。飲んでも良いかな・・・。



竜の顔が怒っているみたいで、どうしても躊躇してしまう。

飲みたいけど、これを飲んでラーメン用に持ち帰ったら罰が当たりそうな気がする。

必死に我慢。



いよいよ本格的な登山道へ突入。

もう、唾液すら枯渇している。



ついに牛尾山の展望台に到着!!

人が居たら水を貰おうor買おうと思っていたが、誰も居ない・・・。



頂上からは、滋賀県民から京都市民へ無償の愛で提供されている水瓶、琵琶湖がくっきりと見える。

滋賀県民を格下に見ている京都市民よ、あなた方は、滋賀県民に生かされていることを実感しなさい。

でも、京都市民が滋賀県民を格下に見るとき、滋賀県民は京都市民に対して「誰の水で生活してるねん」という言葉が決まり文句らしい。



人間って、本当にくだらない生き物だわ。



話は戻るが、もうどうしようもない位に喉が渇いた。

これ以上我慢出来ない。

色々と考えた結果、さっきの砂利混じりの水をしばらく容器に入れ、砂が沈殿すれば上澄みを採取し、それを沸騰させれば安全に飲めると思った。

ついに、綺麗な飲料水が完成!!

このお湯でカップラーメンを作る。



旨い・・・旨すぎる・・・。

高級レストランで、ただ座っているだけですぐに出てくるコース料理を食べる人間には、このカップラーメンの味は分からないだろうな。



水分を補給出来て、ようやく牛尾山が楽しめるようになった。

この山、いろいろとコースが豊富で本当に楽しい。



京都山科と滋賀県大津市を分ける場所、国道一号線の追分へ到着。

自宅を出発して6時間。

水を忘れたせいか、今日は記憶に残る山登りになった。



帰宅途中。

関西最大級の無印に寄ってみる。

ビルの2階・1階・地下1階がすべて無印の店であり、生鮮食品やらフードコートやら、オシャレな店ばかり。

僕が子供のころ、ここには薄暗い公園があっただけだったけど。

諸行無常、物事すべて、家族も仕事も何もかも、知らぬ間に少しずつ移り変わっているのだな。



琵琶湖から京都市へ送り出される水、疎水を歩いて実家へ帰る。

約30年振りにこの場所を歩いたけど、ここは子供の時から変わらないな。

妻と離婚して、子供と離れた今。

実家に帰っても良いかな。

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