ここは奈良県大和郡山市。
とあるきっかけで知ったのだが、この街には大正~昭和にかけて数多くの遊郭が存在していたらしい。
わざわざ有休を取り、遊郭があった場所へ向かう。
なんで有休を取ってまで遊郭なんかを見学したいの?
と殆どの人に思われそうだが、最近色々と考えることがあり、辛い状況下でその時を一生懸命に生きた人たちの痕跡を追ってみたくなったのだ。
道路にひっそりと記された道しるべを頼りに進む。
一筋入っただけだが、一気に空間が変わったことを実感する。
目の前に、遊郭らしき建物がそびえたっている。
ついに到着。
この遊郭跡、現在は無料で見学出来る資料館となっている。
平日という事もあり、自分以外に見学者はゼロ。
靴を脱いで中へ入ると・・・
こんにちは♡何か御用ですか♪
昔はさぞかし美しかったであろう、おばさん~お婆さん位の方が登場。
聞けばなんとマンツーマンで遊郭内を案内してくれると。
すぐにお願いした。
ここは、遊女が並べられていた場所らしい。
その遊女たちを客が格子の向こうから覗き、選んでいたようだ。
しかし、格子の隙間が狭くてはっきりと見えないようになっている。
この点を案内婆さんに聞くと・・・。
そうなのよ♡やがて格子から覗く事が禁止されて、その代わりに別の部屋に遊女の写真を載せるようになったのよ♡
その場所が、ここらしい。
足元がどうも「池」のようになっている。聞けば、何とここには「金魚」が泳いでいたらしい。
さすが金魚生産日本一、もしくは日本二位やったか?の大和郡山。
この池の上部にある壁に遊女の写真が飾ってあり、氏名するように変わっていったらしい。
買われた遊女は、この階段を上り客間へ向かう。
買ったスケベな客は、この階段を上り遊女が待つ客間へ向かう。
するとここで、案内婆さんが言う。
婆さん:この階段を見て何か感じる?♡
自分:いえ何も・・・。ただの階段にしか見えませんが・・・。
婆さん:この階段ね、多くの男性客が昇り降りしたから、階段の端の角が削れて丸くなっているのよ♡
タシカニ・・・マルクナッテイマス・・・。
あ~!!同じ男として、言葉に出来ないもどかしさを感じる・・・。
男って本当に情けないわ。
それよりも、このセクシーなお婆さん。
二人きりでこんな下ネタを話していると、婆さんに少しドキドキしている自分も情けない(笑)
大正時代とは思えない、エロさ満開の遊郭内。
当時の便所がそのまま。
ここは遊女たちとの宴会をする部屋。
ここで、遊女と客が戯れる。
奥の格子だが、二階、三階と登るにつれ、格子の隙間が開いていく。
上に行けば行くほど、周囲から覗かれないからだ。
ちなみに、それぞれの客室は隣同士であり、換気窓も大きく廊下に空いている。
婆さんが言う。
これ見たら分かると思うけど、もうすごいオープンな環境でしょう♡
きっとね、当時は四方八方から「喘ぎ声」が飛び交っていたでしょうね♡
婆さんや!!もう何も言わんでくれ!!
この婆さんから非常に強い色気を感じる自分がいる(笑)
白人が妊娠をして以来、自分は禁欲生活が続いている。
婆さんに色気を感じるなど、自分の頭がおかしくなっているようだ・・・。
ちなみにこの遊郭(川本楼)は、売春禁止法が施行される昭和33年まで営業していたそうだ。
その後は下宿する人の住処になったらしい。
下宿人が部屋に貼った謎の外人女性。
めっちゃ古い新聞記事が、何故かポスターのように張り付けられている。
NHKの受信シール。
知らなかったが、昔はラジオの受信料まであったのか。
遊女たちが入浴していたであろうお風呂。
浴室の天井には、遊女たちの神のようにそびえ立つ「川本楼」の主、川本家の家紋が刻まれている。
客室2階にあるトイレ。
このトイレの凄いところは・・・。
トイレ前にあるこの板。
なんとここは、当時はガラス張りであり、その下に金魚が泳いでいたそうだ。
ここは川本楼の主である、川本家のプライベートルーム。
客人をもてなす部屋だったらしい。
ここは店の入り口で、いわゆる受付の場所だ。
なんか、エロいな~。
当時の遊女たちの小物ボックス入れ。
「晴美」やら「久子」やら名前がある。
この同じ空間に、病気になり養生が必要な遊女の治療部屋もある。
たった一枚の、この格子。
でも、たった一枚の格子を挟んで、買う側と買われる側という180度違う世界が存在する。
遊女の気持ちを考えると、辛くなってきた。
外に出て周囲を散策する。
この周辺の殆どの遊郭は取り壊されたようだが、まだ一部分は残っており、実際に人が住んでいるらしい。
更地にされた他の遊郭跡。
華やかだった当時の面影は微塵もない。
世の中全て、移り変わっていく。
諸行無常。
帰り際、何気なく本屋さんに立ち寄る。
たまたま手に取った本。
1リットルの涙。
15年ほど前に、沢尻エリカ主演でドラマ化された本だ。
素晴らしい本で、確か世界中で翻訳されていたと思う。
実話のモデルとなった木藤亜也さん。
中学生の頃に難病の「脊髄小脳変性症」を発症される。
小脳が徐々に萎縮する病気であり、歩行も困難となり、やがて亡くなる病気だ。
ご本人が必死に生きた証を日記にされている。
いつか読んでみたかったので、すぐに買った。
この人は、書くことしか出来ない、しかしそれが全世界の人々に生きる勇気を与え、生きることの意味を考えさせ、若くして死んでいった。
五体満足で皆が羨む美貌を持っていても、煩悩に支配され、求める男性は金を持っていること、辛いことがあれば覚醒剤、そんな生き方もある。
難病で書くことしか出来ない、しかし世界中の人々の心を動かし、死んで今もなお影響力を残している、そんな生き方もある。
遊郭で生涯を終える人、身近な幸せに気づかず煩悩まみれで苦しむ人、若くして難病で生涯を終える人。
生きるって、なんでこんなにも苦しいのか。
でもどんな境遇であれ、そこで今を一生懸命に生きるってことが、生きることの答えなんだろうと最近思う。
2021年の抱負は「今を一生懸命に生きること」に決定♡♡♡